しんあいゼミナール

共通テスト 英語所感

遅くなりましたが、高3英語担当の木村より、共通テスト英語リーディングについての感想を書きたいと思います。

今回「やたら難しくなる」との前評判があり、我々講師も入試システムの変化について様々な説明を受けて「相当に難しくなるだろう」との予想を立てていました。しかし実際に蓋を開けてみたところ、「分量は多い。しかし読解力さえあればいける」という感想を持ちました。実際、今回の内容であれば100点を狙える子もいたのではないでしょうか。読解力さえあれば、ですが。

前々から予告されていたとおり、試験が長文オンリーとなりました(リーディングという名前のとおりですね)。これまでのセンターでは、最初の方の知識問題で案外点数を取りづらく、対策するにも厄介な部分でした。それがまるまるなくなったことで、非常に首尾一貫し目的がはっきりとしたテストになりました。
ただし、かなりの分量を80分で読み解かなければなりません。正直、解いていても「え、まだあるの!」という感じでした。受験生の多くは厳しい時間勝負を迫られたのではないでしょうか。私が担当している生徒達からも「問題が多すぎて終わらない」という感想が真っ先に聞かれました。

分量以外の特徴として、問題の質が挙げられます。わざわざプレゼンやクラス発表原稿の形にしてみたり、webサイトやメールの情報を読み解かせたりと、とにかく余分なおまけがついてくる。普通に解かせてはくれません。おまけを含めて解かせる問題ばかりなのです。しかし、このおまけこそが試験の肝だと言えると思います。
今後の国際社会の中では、当然のことのように様々な場面で英語を読み解く機会が出てきます。私はダイレクトパブリッシングもやっていますが、AppleやAmazonはアメリカの会社なので、出版への手続きは英語で行っていきます。もっともこれには大したスキルは要りませんが、会社から私生活に至るまで、小さな場面でも英語を使う機会が出てきていることは事実です。ITの時代だからこそ余計にそうなのでしょう。
そのような中で必要とされる力を考えた時、「情報を端的に読み取り処理する問題」は理にかなっています。さらに、高校における英語教育の意義を考えた場合も同じことが言えるのではないでしょうか。私は知識の習得がゴールだとは思いません。単語を知っている、文法を知っている、そういうことではなく、習った英語をいかに使えるものにしていくのかが重要です。英語を自分なりに運用できているかどうかが主眼なのです。

もうお分かりのとおり、新しい試験で問われている能力は、英語の知識でも、単語の暗記量でも、傍線を訳す能力でもありません。国語と同様の読解力です。もちろん私達の母語である国語ほどの難解さはありませんので、ごくごく当たり前の力を問われているにすぎません。たとえば第2問にはこんな問題がありました。

問3 One fact from the judges’ individual comments is that 空欄選択

問4 One opinion from the judges’ comments and shared evaluation is that 空欄選択

これって中1あたりの国語ワークで見たことありませんか? 文章全体を俯瞰し、明らかな事実として読み取れることを答える。あるいは逆に後ろと繋がる意見側を拾う。つまりは中1程度の国語の読解みたいなものです。この手の出題になってくると、すばやく全体像をつかみ、文の骨格を理解した上で解答していく必要があります。
悩ましいのは、「単語は分かる。ついでに訳もできる。でも不思議なことに全然内容が頭に入ってこない」という現象が往々にして起こり得るということです。同様のことは現代文の論説でも言えます。センターの頃から一貫して、国語の第1問は長くて小難しい文章ですよね。あれを何から何まで分かろうとするには、常人の頭のスペックでは追いつきません。わざと分かりづらくて長い文章を選び、論理の混乱を誘っているのでしょう。英語の場合、そこまでではないはずなのですが、やはり日本語よりは断然見慣れぬ外国語。単語が小難しかったり、文脈が複雑だったりと、少しの引っ掛かりが積み重ねられることで、簡単に頭は混乱し、視線が狭くなって全体像が分からなくなってしまうのです。
この混乱への対策こそが、多くの受験生が取り掛かるべきテーマだと思います。これは単語をひたすら覚えることでも、ネイティブ感覚を身に着けることでも、スラッシュリーディングで速読することでも解決しないと思います。やるべきことは、英語の知識をある程度身に着けた上で、「意図して論理的に読む癖をつける」ことです。現代文の先生達は徹底して論理的読解を叩き込みますが、英語でそれをやる人は案外少ない。かく言う私も、現代文では自分なりの論理読解の指導を確立させましたが、英語でそれを実践する必要性を、あまり強く感じてきませんでした。(ディスコースマーカーについては、これまでも折を見てやってきましたけどね)
批判を恐れずに言いますが、論理的読解というのは一部の成績上位層にとっては「は?何言ってんの?」の世界です。驚くべきことに、頭がいい子の中には意識せずとも文章を論理的に読み解ける子がいます。また、英語に限った話では、上智などの英文を普段から読んでいるレベルの子ならば、特に論理を意識せずとも、大学入試程度の英語ならばすらすら頭に入ってくるようです。そのような突き抜けている子達にとって、今回の試験はものすごく簡単だったようなのです。
しかし、英語が突き抜けているわけではない多くの受験生にとって、今後の共通試験対策は、なかなか難儀になってきます。まずは簡単な文章から、展開を意識しながら全体を掴むような読み方を導入していくべきかと思います。その際に下地となってくる知識が確立されていない場合は、早急に取り掛からないといけません。

ともあれ、共通テストに変わって最初の年、ようやく方向性が見えてきてほっとしています。
受験生の皆様、お疲れさま。引き続き、私大や二次に向けて頑張っていきましょう。

数学も、今解いているので時間があったら分析しますね。

木村

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